呼ばれた気がして振り向けば
小さな子のめちゃくちゃな笛の音に
パラパラめくれる文庫本と
御守りがわりの腕時計が
止まったまま2度引っ越して
書きかけの葉書を投函したら
「おはよう」明け方の電話で
沈黙が切り開いた空へ
プラカードを握りしめ横たわれば
一粒の蒸発する汗
にわか雨に濡れる肩に
早口で名前を呼べば
ため息でぼやける遠くの窓の向こう
ベンチが見当たらない街で
ふやけた紙袋の底が抜けて
明滅するスマートフォンと
水たまりに思い出し笑いが広がって
松葉杖で星座がつながれば
自転に抱きかかえられて
一滴もこぼれない海
© 2025 Eiki Mori
Substack is the home for great culture